多趣味おばちゃん 小学校教員のメモ

気が合う人、教育について語り合おうぞ!学習ソングも作曲中。

2年生道徳(東京書籍)7の教材研究「わすれられないえがお」 

7「わすれられない えがお」【善悪の判断、自律、自由と責任】

 

勤務校の今年度の重点項目2つのうちの1つが、この【善悪の判断、自律、自由と責任】です。1丁目1番地ですね。

私も秋にこの項目で授業研を行いますし、同僚はこの項目、この教材で6月に1人1授業を行いますから、気合を入れたいところです。が、早速いろいろ悩んでいます。

 

人がいっぱいのバスの中で、突然バスが乱暴に揺れておばさんの足を踏んでしまった、せいこ。

 

むっとしているみたいでとてもこわそう。(このまま、だまっておこうかな。)

バスが動き出す。(どうしよう。)

その時、お母さんがいつも言っていた、「わざとでなくても悪いことをしてしまったら謝るのよ」という言葉を思い出す。

もう一度おばさんを見るが、相変わらず怖そう。

でも、「ごめんなさい」思い切って言ったせいこ。

(怒られるかな)

ところがおばさんは見る見る素敵な笑顔に。胸の中がすうっとした。

30年近くたった今でもそれを忘れることができないとのこと。つまり回想です。

 

葛藤、わかりませんけど、わかります。(笑)

【わからない】というのは、大人になった私は、足を踏んでしまったくらいだったらすぐに「あ、すみません!」と何もためらわずに謝れるからです。

【わかる】というのは、娘が、このようなことが起こった時に、なかなか謝れない場面を幾度となく見てきたからです。例えば、友達にぶつかってしまった時。食べ物を落としてしまった、手がお母さんの目に当たってしまった、ジャンプして車を降りたらお母さんの顎に頭が当たってしまった。。。「わざとではないからこそ、(わざとではないけど、痛かったでしょ、ごめんね!)ってすぐに謝ればいいんだよ。わざとではないのだし、相手もすぐに『いいよ』と許してくれるよ」そんな話を何度も何度もしてきましたが、なかなか言えないものなのですね。(友達には言っていると言っていますが。)相手が私だからでしょうか。

やっと最近になってすぐに「ごめんね」と言うようになりました。しかし、「早く謝らなきゃ怒られる」というような感じなのです…私の伝え方がまずかったかなと反省しています。

(特に、お古のスマホで動画を見ていて落とした時に、「壊れるよ!高いものなんだよ!」と私が大きな声で言うからだと思います…すぐに「ごめんね」と言います。汗)

 

もう1つ【わかる】のは、怖そうな知らない年長者が相手なら、どんな話でも話かけづらいということです。

同級生同士でも、そこまで親しくない異性に対してだと言いにくいという子もいます。給食当番を、何らかの事情で代わりにやってもらった時に、「ありがとう」とか「ごめんね」とか一言言えばいいのですが、それをせずにトラブルになるというようなことがあります。相手によるところが大きいのですね。

 

・・・と、「謝る」ということについて思い当たることを書きましたが、今回の内容項目は

「よいことと悪いことの区別をし、よいと思うことを進んで行うこと。」

 

です。

2の【正直、誠実】ではないです。でも、かなり関連が深いですよね。

(この「関連項目」というのが私の中で何かモヤモヤするところなのです。だから整理できないけれどこの際あえて書いてみます。)

 

指導要領解説を見てみると、1には

「物事の善悪について的確に判断し、自ら正しいと信じるところに従って主体的に行動すること、自由を大切にするとともに、それに伴う自律性や責任を自覚することに関する内容項目である。

(中略)

「よいこと、正しいことについて、人に左右されることなく、自ら正しいと信じるところに従って、誠実かつ謙虚に行動する…」

「特に価値観の多様な社会を主体的に生きる上での基礎を培うために、…」

とあります。自分に正直に生きる、つまり誠実に生きるということを含んでいますよね。

さらに2には

「自分自身に対する真面目さ」

「伸び伸びとすごそうとする心のすがすがしい明るさ」

 とあります。これもまさに1の「自ら正しいと信じるところに従って」と重なりますよね。

また、9【礼儀】にも関連していると思います。

「気持ちのよい動作などに心掛けて、明るく接すること。」

まさに主人公に求められているのはこれです。「ごめんなさい!」とお辞儀。

解説の9【礼儀】中学年のところですが

「人に頼むときや失敗して謝るときなど人との関わりを通して、真心は相手に態度で示すことができることに気付かせる…」

とも書いてあります。

 

ちなみに【正直、誠実】の教材文は2年生ではこの教科書では「金のおの」が30に出てくるだけです。「正直のよさ」が主題ですね。

それと【礼儀】は20「あいさつっていいな」で学習します。

 

こう書いてみると、何となく分かりました。

 

まず、 「各項目はこんなにも関連している」ということです。

…当たり前といえば当たり前ですかね!!特に1【善悪の判断、自律、自由と責任】については。【善悪の判断】の「善悪とは何か」は、以降の各項目の例えば【規則の尊重】だったり、【正直、誠実】だったり、【節度・節制】だったり、【礼儀】だったり【公正、公平、社会正義】だったりする訳ですものね。

(解釈が間違っていたらご指導ください。この部分以外でもです。)

 

でも、あくまで主題は1で、「よいこと わるいこと」なので、導入は

「すぐに謝れたことがありますか。謝れなかったことがありますか。」ではなく、

「正しいと思ったことをできた時はどんな時?できなかった時はどんな時?」

であり、振り返りも

「正しいと思ったことをしてよかったことはありますか。どんな気もちでしたか。」

ですね。

(工夫の余地はもちろんあると思います。事前アンケートで理想と現実のギャップを浮き彫りにするなど。また、振り返りをタイムマシーンに乗って過去か未来へ行けるとしたら、自分に何と言うか。など。←これは昨年度の同僚の実践です!)

 

基本発問では、指導書には「役割演技」と書いてあるけれど、「ごめんなさい」というまでの場面で台詞や行動はあまりないので、動作化か、

それか、心のペープサート「こころん(仮称)」「ゆらりん(仮称)」を 左右2つの間で代表の子に動かしてもらって(教師の音読に合わせて)

  「謝ろう」 ・・・♥・・・ 「謝れない」

   (ころころ…  ゆらゆら…)

「どんな気もちなの?」「どうして?」など尋ね、引き出す。

人間理解ですね。

お母さんが一部始終を見ていたらそのプレッシャーもあってもっとすぐに謝る気もちが強くなっていたとは思うのですけどね。それがなくて完全に自分の判断に任されている。完全に試されていますね。意見には価値の高低が入り混じりそうですね。

THE・他者理解。

「謝れない」…(謝りたいけど、怖くて声をかける勇気がでない。)

       (謝らないでも何とかなりそう。)(バスのせいだし。)※

 

「謝ろう」…

(謝らないと「こういう時は謝るもんだよ」と注意されそう。)

(お母さんの言うとおりだ。謝らなきゃ。)

(謝った方が、おばさんはうれしい。)

(自分もすっきりする。)→出るかなあ

(わざとでなくても、おばさん痛かったよね、ごめんなさい。)→出ないよなあ

 

仮にこう尋ねたらどうでしょう。

「(上記※のように、)もし謝らなくても、おばさんは『バスが急に揺れたのだから仕方がない。それに、子どもだから、特に年上には恥ずかしくて謝りにくいだろう』と、分かってくれると思うよ。きっと怒らないよ。だから謝らなくてもいいのでは?」

 

「わざとでなくでも謝ること」の是非、価値を、子どもたちに尋ねてみたい。

「よいことと悪いことの区別をし、よいと思うことを進んで行うこと。」

 の後半部分【よいと思うことを進んで行う】がこの教材文の主題だと思いますが、

前半部分【善悪の判断】も低学年ではわざわざ書いてある重要な部分。ならばそれも問う必要があるのでは??と私は思うのです。

そしてその基となる【礼儀】【正直、誠実】の価値理解 も当然必要なのではないかと。

 

この(仮)発問で揺さぶれば、挙手等で各児童の立場をはっきりさせた後にだれでも発言できそう。

(わざとでなくても、おばさんは痛かったんだから、謝るべき。)(謝った方が、おばさんはうれしい。)とか、(いや、謝らなくてもおばさんは大人だから気にしない)とか、(子どもでも謝るべき)(勇気を出せば謝れる)(だって僕も謝ったことあるもん)とか、

(おばさんもすっきりするし、自分もすっきりするよ。)などなど

 

発問3の「おばさんの笑顔を見て、せいこはどんなことを思ったでしょう。」につながる発言が引き出せるのではないでしょうか。

(やっぱり謝ってよかった!)(胸がすうっとした)(早く言えばよかった)(怒られなくてよかった)

 

その他、時間が許せば子どもたちと話し合ってみたいことは、

 「なぜ、30年も忘れられないのだろうね」

運動会でもない、学習発表会でもない、数分間のちょっとした出来事なのに…

 

(それだけドキドキしたからかな)(モヤモヤ悩んだからかな)(その結果、ちゃんと謝れて、すごくうれしかったからかな)(褒められた気がしたからかな)(おばさんの顔が本当に恐ろしくて、それが素敵な笑顔になったからかな)

(自分で考えて、自分で言えたからかな)

 

…正しいと思ったことを、自分で判断して、自分でできた。

 → すっきり。 自信がつく。

 

おっと、結局、他の内容項目ではなく、この項目で落とし所が見つかりました。

 

 

そして、こう考えていくと、最後の振り返りは

「自分に『すっきり♥バッジ』『自信アップ★バッジ』をあげるとするなら、いつ?どんなとき?」

 

過去の自分に。

思いつかなければ、これからの自分に、「これができたらバッジあげるよ」というのでもいい。

 

2年生初期なら、こんな楽しい振り返りも大いにありだと思います。