多趣味おばちゃん 小学校教員のメモ

気が合う人、教育について語り合おうぞ!学習ソングも作曲中。

「対話」でこそ気付く「分かったつもり」~第15回 教室『学び合い』フォーラム全国大会in福岡

2019/08/03 行ってきました、第15回 教室『学び合い』フォーラム全国大会in福岡

 

私が一番感じたのは、午後の分科会2で『学び合い』を体験してみて、

「対話」でこそ「分かったつもり」に気付く ということです。

 

科目、単元は、高校物理の「力学」。

机上には、プリントと教科書。

「懐かしい~ けど全然わからん(汗)」

 

そして、先生役である若手の男性教員が話し始めます。

「物理が得意な方。…少ないですよね。

私は、女子校で、こんなアウェー感の中で授業をしています。」

「本気で寝る子もいます。けれど、『学び合い』授業では少なくとも寝ません。」

…なるほど。切実です。小学校とは一味違う切実感。でも根底は同じです。

 

プリントの一番上に書いてあります。

目標「(学級の)全員が、空中で運動している物体にはたらく力を図示し、理由を説明することができる。」

 

全員でこれを確認しました。(「一人も見捨てない」思いを共有する。)

 

課題がクリアできたら、本来なら黒板に貼ったネーム磁石を移動させ

誰がクリアできたか誰からも見られるようにするらしいのですが、

今回はその代わりに、首から下げている名札を裏返しにすることになりました。

 

また、グルーピングは普通はしないそうですが、

今回は初めてということもあり、安心して取り組めるようにと、4~5人でグループをつくり座って始めました。

班で自己紹介し合った後でスタート!

  

プリントには

①転がるボール、止まったボールにはたらく力の例示 があり、

走り幅跳びをする時に、その人にはたらく力の例示 があり、

③として、

「問 選手が空中にいる間に受ける力を図に矢印で表してください。

また、その理由を3人に説明し、納得してもらえたらサインをもらってください。」

という課題がありました。

 

意外だったのは、黒板に答えが貼ってあることです。

「答えを見に来てもいいですよ。」と先生。

 

 同じ班のAさんは、早速見に行っていました!

私は、「まずは自力で考えたい!」と言って、一人プリントに向かいます。

BさんはCくんと教科書を見ながらあれこれ話し合っています。

 

私は「重力」と「空気抵抗」を記入していました。

すると、Bさんが先生をつかまえて、「空気抵抗はありますよね?」というような質問をしていました。

先生曰く「空気抵抗は本当はあるけれど、今回(高校物理)は考えないことにします。」

とのこと。

自力で解きたいと言いながらも、それを右耳ダンボで聞いていた私は、へえ~と思いながら、修正。

 

え?そしたら「重力」だけになるじゃん?それだけでいいの?!

 

?が頭の中でひしめく中、もう一度教科書をよくよく読むと、

「①接触している物体からの力」と「②接触していなくてもはたらく力」とがあると書いてあり、

①には反作用や摩擦力、②には重力の他、静電気力や磁気力があると書いてありまして…

「今回は②だ、しかも静電気力や磁気力ははたらいていないから、重力だけだ!」

と確信したのです。

そしてそれをプリントに書き書き。

 

その時、AさんやBさん、Cくんはもう他の人に説明してはサインをもらっていました。

私も遅ればせながら、Aさんに説明して、サインゲット!

続いて他の班に出向いて、DさんとEさんに説明しました。

 

すると…すぐにサインしてくれないんです。(汗)

ん?という顔をして、私の解答文を静かに読み直していました。

…「どこが分かりにくいですか?!」と尋ねればよかったのですが、

その時は私も黙って待っていました。

そして、教科書の記述を指差して「この部分です。~の場合は~で、今回は~の場合だから、~ですよね。」と伝えました。すると伝わった様子で、サインしてくれました。

 

ほっとした私は、班のAさんと感想を話し合っていました。

 

ここからなんです。

 

BさんとCさんが「鳥の場合はどうなるの?」と問答しているのが聞こえました。

むむむ!言われてみればそうだ。

私「物には接していないけど…翼で空気を押しているから、その反作用がはたらいているはず!」「あと、揚力もありますよね。」

B「でも、空気抵抗は普通は考えないんですよね?」

B&A「揚力??」

私「・・・」

 

揚力について説明しようと、図を描き始めた私。

その間に先生が回って来られ、BさんとCさんが質問。

「羽ばたいている時は、揚力は関係ありません。」「翼で空気を押し、押し返される力がはたらきます」とのこと。

なるほど~ と一同。

 

私「それと、幅跳びをした人は進行方向に動いているのに、そちら側に何も矢印を描く必要がないのが何だか腑に落ちません。」と先生に質問。

解説を聞いて、納得(多分)。

 

その後、班で感想交流がありまして、

Bさんが「対話すればするほど自分の「分かったつもり」があぶり出された」と言っていて、うんうん!と大きくみんなでうなずきました。

Cくんの「鳥は?」のつぶやき以降がまさにそうでした。

 

それをさらに実感する出来事が、この直後に起こります!

解散の合図の後にも関わらず、「揚力」について私が説明を始めました。( ̄ー ̄)スミマセン。

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翼の断面図と揚力

風(赤と青)は同時にA地点を出発して同時にB地点に着く性質がある。

ということは、赤の方が風のスピードが速いということになり、

つまり、赤の側の方が気圧が低くなる。

よって、翼は上に上がる。これが「揚力」だと。

 

 AさんもBさんも「ん????」「気圧が低い??」「なぜ上に上がるの?」

私は「ほら、これが水だとしたら、上の方がぐわあーっと水をかくから

水が少なくなって、だから翼は上に行こうとするでしょう」と必死。

でも伝わらない。

「水じゃなくてビーズだったとしても同じ。下側(青)はゆっくりビーズを動かすから、その間に周りからビーズが動いてくる。

でも、ビーズをあっちに速く動かしたら、周りからビーズが流れてくるのが間に合わない!ビーズが足りない!早く来て!ってなるでしょう、だから、翼はそっち(上・赤側)に動く、つまり、浮くんです。」

必死な私の頭はフル回転して、次の例、別の表現方法を、苦し紛れに生み出したのでした。

AさんBさんから「ああーー!!なるほど!」の声。

笑顔で解散しました。

 

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

「どういうこと?」「こういうこと?」を口にすると問答が生まれ、また

問答しているうちに疑問が生まれ、

思うように説明できなくて「分かったつもり」に気付き、考え直し、また疑問が生まれ・・・

 

まさに、「主体的・対話的で深い学び」なのでは?と感じました。

 

これまでの私の一斉授業で、どれだけ「分からないと言えない」「分かったつもり」を生み出し放置してきたことか・・

 

「どの子も生きる・伸びる授業」「深い学びのある授業」を探ってきたけれど、

その鍵となるのは、具体的にはこれなんだと学びました。

「分からないと言える」

「分かったつもりに気付く」

 

…教師なら誰もが経験して感じているはずのこと。

だけど心の奥から目の前に急浮上してきたこと。

 

他の授業例も知り、学んでいきたいと思います。

 

つづく