多趣味おばちゃん 小学校教員のメモ

気が合う人、教育について語り合おうぞ!学習ソングも作曲中。

2年「おれたものさし」指導案、指導の実際、成果と課題

f:id:shochandoeeeesu:20210130082459p:plain

指導案1~4

f:id:shochandoeeeesu:20210130082707p:plain

指導案5(1)

f:id:shochandoeeeesu:20210130082743p:plain

指導案5(2)

5 成果と課題

(1)自評

△ 時間配分に課題があった。中心発問で時間を取り過ぎ、まとめや振り返りがほとんどできなかった。(まとめは、「今日みんなが見付けたことは?」「『道徳コーナー』に何を書く?」と問い、板書の中から選んで個々人が指差すようにし、多くの児童が指差した箇所を示すに留まった。振り返りは「勇気を出して!」の記述が多く、「勇気のもと」に関する思考の深まりを見取るものにはならなかった。)優しさ(自分のことのように思う)と、正しさ・強さ(ひるまずに相手に伝える)で、折れない心、勇気のもとというところをくくりどころとして板書しようと思っていたができなかった。

△ 2回目の役割演技直後に、物さしを渡した後の「ぼく」および「みんな」の心情を問い、「すっきりした、伝えてよかった(モヤモヤからスッキリへ変化)」や、「『ぼく』の行動がかっこいい」等を引き出し、勇気を出して伝えるよさを押さえようと思っていたが、発問を失念してしまった。そのため、「どんな気持ちから渡したか」を繰り返し尋ねたことになり、間延びした。

△ 普段の授業よりも、特に授業後半、児童の参加率が低かった。その原因の1つは前述の間延びだと思う。また、中心発問が難しいと感じる児童が多かったことも原因であろう。

△ 教材文の内容把握が難しい児童が予想どおり多数おり、それに対する手立てが足りなかった。端的に「『ぼく』は、この前は自分のせいにされた。今回は『ひろし』のせいにされているのを見た。そして物さしをのぼるに返した。その時の気持ちは」と問う方法もあった。

(2)協議内容の要点

○ 問い返しにより思考が深まった。

○ これまでの学習の積み重ねが生かされていた。「道徳コーナー」の効果が大きい。

○ 今回のような役割演技の手法、音声の活用が効果的であった。

△ 役割演技はもっと効果的にできたのではないか。無言の役は難しい。気持ちを役の途中で言う方法もある。

○ 笑顔マーク、悲しい顔マークでの視覚化や、マークを動かし重ね「自分とひろしを重ねた」ことを表したことが、児童の理解を助ける上で効果的であった。

△ 「勇気のもと」のまとめが不足していた。

○ ルーティーン(「道徳コーナー」を活用した導入、「なりきりタイム」(役割演技)、「本音さん」での問い返し)があり、児童が学習活動に慣れていた。

○ 受容的な風土が、教師にも児童にもある。

○ 振り返りを「未来の自分へのメッセージ」とすることで、自分ごととして考えることができる。

△ 役割演技で、「役をやりたい」多数の児童がおり、しかし当たった1人以外は落胆の声を上げていた。思いを語る「なりきりタイム」のはずが、心情理解に役立っていない。あらかじめ「見ている子は『まわりの子』の役だよ」等と伝えるとよい。

△ 「思いを語る」という点では、児童のつぶやき「赤の中に青も混じっているよ」を拾って児童に語らせるとよかった。ただし、授業中盤の時間短縮がさらに必要となる。

△ 児童の発言について、教師が語る時間がやや長かった。それを改善すると時間短縮できる。

△ 机間指導が長かった。丸を付けて回り、声をかけて考えを引き出したり価値付けたりすることで、どの児童も考えを書くことができ、自分の意見に自信をもつころができたが、時間配分を改善するにはこの部分の短縮が必要である。例えば毎時間の授業で書く時間を3分と決めてタイマーを鳴らし、その時間に慣れるようにする等の方法が考えられる。

(3)受指導の内容の要点

・ この内容項目は、旧学習指導要領では【正しい判断、勇気】であった。だから、「勇気」という言葉を安易に使うべきではない。しかし、6月の同項目の授業で児童から出た言葉なので、今回はよかった。

・ 【正しい判断】は「気持ち」であり、【勇気】は「行動」のことを表す。今回は【勇気】なので行動についてが中心となるが、なぜ行動ができたのか、行動を起こす時の気持ちが重要となる。「できてすごいよね」ではなく、「~だから勇気は大切だ」「こうやったらできる」ということ、今回は「友達のことも自分のことのように考えたら、勇気が湧く」ということに迫るものだった。

・ 「道徳コーナー」が生かされていた。導入にテーマを明示すると、児童はすぐに同テーマの回を探した。シンプルでよかった。例えば「前にみんなが見つけた宝物は?」と問うのもよい。

・ 「思いを語る」については、本時の全てのシーンがそれだった。児童の発言に建前はなく、全て本音である。

・ そう考えると、問い返しで使用した「本音さん」は、「揺さぶりさん」ということである。

・ さらに児童が思いを語るようになるための手立ての1つは、理由を言わせることであろう。「なぜそう思ったの」と問い返したり、「~です。その訳は、~」という話型を示したりし、言える児童を育てていく。今回は、発言が苦手な児童が多いということで、とにかく一言でも言えるようにとの思いが授業者にあった。児童の実態に合わせて手立てを行うとよい。

・ 授業者は「最後にもう1段高めたかった」と言っていたが、「高める」というよりも「整理する」ことが重要である。例えば、板書で1番納得したところにネームプレートを貼る方法もある。また、「今日のめあてはこれだったよね」「今日の学習で1番自分にとって大切と思ったことは」「今日の黒板を見て気づいたことは」等と問い、振り返りをするのもよい。

・ 児童は、多面的・多角的に考えることができていた。「広がった」「ぶれた」という言い方をする教師もいるが、そうではない。「多面的」とは、内容項目1つについていろいろな見方があるということで、例えば【親切】について、優しくしてあげることが親切だという見方もあれば、優しくしないのが親切だという見方もある。「多角的」とは、他の内容項目と関連させることで、例えば今回は【友情】【公正・公平】【親切】【正直】などの側面からも考えた。本時は特に多角的な見方ができていた。

・ 児童の発言に「前のぼくみたいにさせたくない」というものがあり、それが話合いの核となった。

・ 中心発問の難易度の問題、時間不足の問題を解決する代案としては、問い返しではなく中心発問を「前回は自分のことだった。今回は友達のことだったのに、なぜ物さしを渡せたのか」とすること、つまり初めから狭い範囲の発問にすることが挙げられる。

 

(4)課題の解決に向けて

・ そもそも今回は「よいと思ったことをするのは、どんな気持ちからか」「よいと思ったことをするのに必要なもの」に焦点を当てた授業だったので、前述の「物さしを渡した後の『ぼく』およびみんなの心情を考えるための役割演技(2回目)と発問は不要だったのではないか。そうすれば時間配分が改善できたと考える。

・ 中心発問について記述をさせたが、「自分ではないのになぜできたのか」という問い返しについての考えを書かせたかった。少しでも書き加える時間を取る、または、前述の受指導の中にあったように、中心発問自体を変えるという方法も考えられる。

 

(5)「道徳コーナー」の活用の実際と成果

f:id:shochandoeeeesu:20210130090804j:plain

教室上部の掲示「道徳コーナー」

 

 指導案で述べたように、導入と展開後半において、同テーマの前の授業分の「道徳コーナー」の掲示物を活用した。このように、前回を踏まえてめあてを設定することと、今回の学習で気付いたこととしてまとめることを、年度後半の様々な授業で行った。単発になりがちな道徳授業につながりが生まれ、児童の道徳的諸価値についての理解を一層深めることにつながった。

 また、本時では、「今回は自分がされていないのに、なぜ勇気が出たのか」という問い返しの後の話合いで、ある児童が掲示物にある言葉を使って「友達を見捨てない」と述べた。また、多くの児童が「あれだ!」「あれもある!」と、内容項目【友情】の授業分の2枚を指差した。このように、内容項目の相互の関連を捉え、多角的に考える手立てとなった。同様のことが【親切、思いやり】等、多くの授業で見られた。

 そして、国語や生活科などの授業や、日常の生活場面で、「あの授業でやった、あのことだよ」等と児童が「道徳コーナー」を指差しながら話す場面が多々あった。道徳授業での学習を他の場面と関連付け、広げることを促す効果が見られた。

 

(6)ワークシートの実際と児童の記述

 本学級の児童の実態を踏まえ、ワークシートは、挿絵と吹き出しを用いたシンプルなものにした。

 

f:id:shochandoeeeesu:20210130085715j:plain

ワークシート

 A児は、授業を通して、友達(被害者)を自分と同じように考えることについて気付き、振り返りでそれを書いている。

1「のぼる、わざとじゃないと思うけど、先生にしかられたくないからって、ちがう人におしつけたらいけないよ。」

2「がんばれ自分。もし自分だったらいけないでしょ。」

 

 B児は、授業での発言が多い子の1人である。主人公が何もできなかった時の気持ちについて、「くそ、やり返したいな」と発言した。その後の中心発問についての記述では、のぼるを諭すような内容をたくさん書いていた。「人のせいにしてもすっきりしないはず。楽しくないはず。」「(意地悪は)いつか自分に返ってくる。」という視点は、加害者にとって意地悪をしない方がよい理由についてである。また、前回の授業での気付き「すっきりしない」も含んでいる。

振り返りでは、「他の人もこのような目に合うのを防ぐために頑張る」ということ書いており、本時の話合いを踏まえたものとなっている。

1「ぼくにはやってもいい。でも、ほかの人にはやるな。それをやってすっきりするか。おしつけるな。この前もそうだっただろ。たにんにおしつけて楽しいか。かわいそうと思わないか。それはいつか自分にかえってくるぞ。」

2「がんばらないと、ほかの人もへんなめにあうよ。」

 

 

 C児は、発言は少ないが、じっくりと考え、書けるようになった児童である。記述の右端(枠外)に、最後に書き加えられたと見られる文がある。「人のせいにする(嘘をつく)と、将来泥棒になる」と、のぼるを諭す内容である。これは、内容項目が【正直・誠実】の授業での話合いで出た意見「嘘は泥棒の始まり」ということを踏まえてのものであり、「嘘をつかない方がよい理由」である。また、加害者側ののぼるの改心を願う内容である。振り返りは、「勇気を出して頑張れ」と書いており、「勇気のもと」については具体的に触れていない。振り返りでは、多くの児童が同様に書いていたので、「理由は」と問い、続けさせるとよかった。

1「いくら先生におこられらくなくても何でなにもしないひろしくんにわたすんだ。のぼるくんがこの前ぼくがみえちゃんの下じきをわってないのにぼくにおしつけただろ。こんかいものぼるがやったんだろ。のぼるくんがしょうらい大人になったらどろぼうになっちゃうから、ちゃんとおれたものさしをわたさなきゃ。」

2「ゆうきを出してがんばれ。」

 

(7)年間を振り返って

 ご指導のおかげで、授業改善を行い、多くの手応えを得た。しかし、低学年の発達段階、児童の実態を考えると、動きがある活動(ネームプレートを黒板に貼る活動や、それによって示した自分や他者の意見を用いて考える活動)等、どの児童も話合いに集中して参加できる工夫が必要である。今年度の研究での成果を全児童のものにするために、今後さらに研鑽を続けたい。

 

shochandoeeeesu.hatenablog.com