多趣味おばちゃん 小学校教員のメモ

気が合う人、教育について語り合おうぞ!学習ソングも作曲中。

2年「きいろいベンチ」【規則の尊重】

これまでの学習の足跡、「道徳コーナー」の活用の手応えをまた一つ得た一時間でした。

 

そして、有名なこの教材文、あえて王道発問ではないもので行ってみました。

そちらでも手応えを得ました。

 王道主発問「最後に二人がハッとした時、どんなことを思ったのでしょう。」

これだと、「謝りに行こう」という意見が出るでしょう。問い返しで「何を謝りに行くの?」「どう謝るの?」と問えば、「靴でベンチに登ったこと」「汚したこと」「汚してそのままにしておいたこと」「他の人のことを考えなかったこと」等、価値に迫る言葉が引き出せますが、

私としては、それは生活場面でよく言うことですし、子どもたちにとっては割とすぐ想像できることではないかなと考えまして、

それよりは、教材文を生かしてもう一歩踏み込んで話し合いたい、新たな発見になることを、と思ったのです。

例えば、「何かに夢中になると、他の人のことや、きまりを守ることを忘れてしまいがち」ということや、

「他の人が実際にいない場合は一層気付きにくい」こと、

「そこにいない他の人のことを考えられるようになりたい」ということを引き出したいと思ったのです。

 

導入

T みんなで使うもの、みんなのものってどんなものがある?

C  遊具 給食 トイレ ベンチ 電車 空港 

教科書(みんなが同じものをもっているから「みんなで使うもの」だけど、一人ひとりに自分のものがあるから、それは「自分のもの」。「自分だけのものではないもの」は?)

地球 空気 学校(手洗い場、グランド、教室) お店 山 道

 

 …たくさ~んあるんだね!

(T これらに「きまり」ってある?どんなきまりがあるかな?

 C 公園にゴミをすてない。 ボール禁止の公園がある。 

   滑り台は下から上らない。

 T なるほど。きまりもたくさ~んあるね。これらのきまりを守っている?

 C 自信ある(半数) まあまあ(少し) いいえ(少し)

 T そもそも、これらのきまりって、どうしてあるのかな。

 C 人の迷惑にならないように。危なくないように。)

 

改善案

「きまりを守ること」は今回は言わずに、「大切に使うこと」に焦点化した方がシンプルだったと思います。きまりというよりマナーに近いところがありますし、

( )内のやりとりはない方が、時間配分の改善になったと思います。例えば「これらを正しく使っている?」「正しく使うって、どのように使うこと?」と問う。

 

T なるほど、これがキーワードだね。では、今日の授業で、これらをもっと深めてみんなで何か発見しよう。

 

読み聞かせ

 

展開

T 2人はどんなことを思ってベンチの上に乗ったのだろう。

C うれしい! 楽しい! もっと飛ばしたい!

 高いところから遠くに飛ばそう!  

 やっと雨が上がった!遊ぼう! 

 

T 役割演技をしてみよう。

C(たくさんの挙手!)2人が演技「わーい!」

T (役割演技した子に)どんなこと思っていた?

C 楽しいな~! もっとよく飛ばしたい!

T (役割演技せずに、見ていた子に)見ていてどんなことを思った?

C ベンチが泥だらけなのになあ。

T・・・そうか、周りから見ていたらそれがわかりやすいんだね。

だけど、2人には分からなかった。

 

T そして、小さい子のスカートが汚れてしまったんだよね…

中心発問T どうして、こんなことになったのだろう。ワークシートに書く。

 

C 遠くに飛ばしたくて「夢中」になっていたから。

 雨上がりで、やっと遊べて夢中だったから。

 夢中になって、雨上がりで泥だらけなのを忘れていたから。

 後で人が座ると思わなかったから。

  

 揺さぶりT でも、普通は座る前に汚れてると気付いてふいたりするでしょう。おうちの人が早く気付いてふけばよかったのでは?おばあちゃんが先に気づかなかったせいもあるのでは?

C いや、それはない! 他の人のことを考えていなかった2人がいけない!

T なるほど。

 

抽象化・一般化T 

「みんなでつかうものを大切にする、それに早く気付けるための『こつ』は何なのだろう」

 

C おうちの人についてきてもらう。

T どうですか?  

C いや、自分で気づいた方がいい!!

T どうして?

C いつでもおうちの人についてきてもらうのは無理。

T みんなは、自分で気付ける人になりたいんだね。

 

C 夢中にならない。

T でも、夢中にならないって、できるかな?遊びたいときはだれだって夢中になりそうだよね。私も。そうすればいいのだろう…

 

C よいか、悪いかを、自分の頭で考える。

T なるほど

 

C 落ち着く。

T どういうことかな?

C 深呼吸して、冷静になる。

T そうすれば、さっきの「よいか悪いか考える」ができやすいんだね。

 

C 他の人がいたら気付きやすいんだけど・・・

T どうですか? C うなずき

T なるほど、他の人が周りにいれば、「これをするとあの人が困るな」と気付きやすいんだね!

 

揺さぶりT …でも、例えばこの辺りの公園では、他の人がいない場合の方が多いよね。どうする?

(「他の人がいなくても、後から他の人が困らないかを考える」を引き出したかったが、できなかった。)

 

終末 振り返り

T 他の人が使うことを考えることが大切と分かったけど、これから先、すぐに気付くことが難しい時があるかもしれないよね。その時の自分へ、「自分へのメッセージ」を書こう。

(C …初めての活動で、意味が分からない子もちらほら。補足説明。)

時間不足で未実施

 

T 「今日の『道徳コーナー』に何と書こうか。今日の授業でみんなで発見したことって、何かな。」

C 夢中になったら気付きにくいから、落ち着いて考える。

T 落ち着いて、人がいなくても他の人のことを考えて使えるようになりたいね。

 

 

中間休みに、何人かの子が寄ってきて、ワークシートを見せながら話してくれました。

ある子は『道徳コーナー』の掲示を指差して、

「4月の『自分でオッケー』の【自分でできることを増やす】に似ているよ」 と教えてくれました。

「本当だ!」「自分で気付くことが増えるといいよね!」

と他の子と盛り上がりました。

すると他の子が、

「『わすれられないえがお』とも似ているよ。【よいと思ったことをする】だから。」

「悪い心に負けずに、よいことをするってこと」

と言い出しました。

そして、帰りの会の「今日のキラリ」の時間に、その子が「〇〇さんが、今日道徳で勉強したことが『自分でオッケー』の勉強と似ていることに気付いて、すごいと思いました。」と発言しました。

 

…子どもたちはすごいですね。

『道徳コーナー』の掲示を続けて足跡を残していき、時折それとのつながりを意識して学習すると、

それを見て、自分でつながりを見つけていくのですね!!

 

私の方が、関連価値について気付かされた日でした。

 

授業始めにみんなで内容項目(テーマ)を確認し、それについての振り返りをすれば、

「内容項目、ねらいがブレる」と心配する必要はなく、

むしろ、関連づけて多角的に考えることができる。

 

 

 

追伸 

ワークシートに「そもそも椅子は座るもの」という意見を書いている子もいました。

もし授業でその意見を拾って取り上げることができたら、こう問い返してみたいです。

→ ならば、この椅子にも、掲示物を貼る時でも乗らない方がいいのかな。

割り箸や輪ゴムは工作のためのものではないから、工作に使わない方がいいのかな?

 …いや、そういうことではないなあ。 ではどういう時ならいいのかな。

 …本当の使い方をきちんと考えて、他の人が困らないか考えて使えばいい。

  ちゃんと靴を脱いで少しだけ上るのはいい 等

  

 

追伸2

 

これを書いた後で、下の記事を見つけ、読みました。

2つは、坂本先生の実践記録です。

「きいろいベンチ」で規範意識

「きいろいベンチ」授業後の反省事項

 坂本先生でも、飛び込み授業で苦戦されることがあるのだなあと、ある意味勇気をいただきました。そして、こういう反省も惜しみなくネットに掲載されるところが実践化たる所以だと思いました。

また、ねらい「はっとした二人の男の子の気持ちを話し合うことを通して、他人への迷惑が想像できる人になることの大切さに気付き、みんなが使う物を大切にしようとする態度を養う。」が特に参考になりました。

 

もうひとつは、ツイッターやブログでいつも学ばせていただいている、キッシュ先生のこちらです。同じ2年の、同じ内容項目です。

ここが特に参考になりました。

おじさんの過去も踏まえると、過去に見た子どもと、今の目の前の子どもの様子を比べて、「マナーを知って、守ろうとしている様子」に気持ちよくなっているとも言える 

 

・マナーを守ろうとする心は、見ている人に伝わる。

eight-eight.xyz

note.com

 

 追記3

今思えば、「ベンチが汚れたことに気付いていなかった」という筋で授業を進めたけれど、

「ベンチが汚れる、土足はまずい、と分かっていたけれど、楽しくてついそんなことはどうでもよくなってしまった」、その方が自然ですね。

そもそも、汚れる、汚れないに関わらず、土足でベンチの上に上がるのはマナー違反。

 そのあたりをもう少し突っ込んで話してみたかったです。